子宮動脈塞栓術(UAE)

子宮動脈塞栓術(UAE)

子宮筋腫を切らずに治す

子宮筋腫とは?

子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍です。成人の女性に多く見られ、大きくなると月経時痛、月経時の大量出血、腹部膨満、頻尿、便秘といった症状が出現します。症状が強い方は治療が必要となりますが、無症状であれば治療の必要はありません。通常は閉経とともに縮小していきます。

子宮筋腫と診断され、手術が必要と言われたら?

子宮を摘出すれば月経がなくなり、子宮筋腫に由来する症状は消失し、将来子宮癌にかかることも無くなります。しかし手術時の疼痛に対する不安や、女性として子宮を失うことに対する精神的な悩み、術後の癒着、術後瘢痕など美容上の懸念から、手術を躊躇して症状に悩みながら生活されている方もおられます。当院ではお腹を切らずに、子宮を残したまま子宮筋腫を治療する子宮動脈塞栓術(UAE)に取り組んでいます。

UAEとは?

UAEは子宮筋腫に対するカテーテル治療で、お腹を切ることなく子宮筋腫を縮小させ、月経痛や出血といった症状を緩和することができます。1995年にフランス人の産婦人科医Ravinaにより初めて報告された比較的新しい治療であり、欧米では子宮筋腫に対する有効な治療法として確立されています。日本では2014年より保険適応となりました。

UAEの方法

右足の付け根に局所麻酔を行い、約2mmの細い管(カテーテル)を挿入し、X線透視を見ながらカテーテルを子宮を栄養する動脈(子宮動脈)まで進めます。
子宮動脈造影で筋腫の部位や大きさを確認し、血管塞栓物質(ゼラチンの粒子)を注入し血管を塞栓します。

対側の子宮動脈にも同様の処置を行います。

カテーテルを抜去し穿刺部位を圧迫止血します。止血後は約5時間の安静が必要となります。

UAE前の左子宮動脈造影。子宮筋腫を栄養する血管が発達しています。

UAE後。子宮筋腫の栄養血管は塞栓され、描出されなくなっています。筋腫以外の正常子宮への血流は温存されます。

入院治療の流れ

入院1日目 ・入院オリエンテーション
・希望者には手術室で硬膜外麻酔カテーテルを挿入します。
2日目 ・朝から絶食、血管造影室でUAEを行います(約2時間)
・術後約5時間安静、夕食から摂取できます。
3日目 ・硬膜外麻酔を継続します。痛みが無ければ麻酔を終了します。
・食事や行動の制限はありません。
4日目 ・退院

UAEのメリットなどについて

UAEのメリット

UAEは局所麻酔での手術となります。入院期間は3泊4日で開腹手術と比べて短く、約1週間で社会復帰できます。カテーテル治療なので体に傷跡が残りません。月経中や重症の貧血を合併していても治療が可能です。

UAEの対象になる方

筋腫による症状があり、子宮温存を希望される方。

UAEの対象にならない方

・妊娠中もしくは妊娠の可能性がある方。将来妊娠希望がある方も原則的には適応外ですが、術後の妊娠、分娩例も報告されています。
・閉経後の方。筋腫の自然縮小が期待されます。
・子宮、卵巣の悪性腫瘍が疑われる方。
・子宮、卵巣、泌尿器に感染症がある方。
・ヨード造影剤アレルギーの既往がある方。

予想される治療効果と予後について

治療終了後3ヶ月で過多月経は85~94%、月経痛は約80%の症例で改善がみられます。子宮筋腫は数ヶ月かけて徐々に縮小していき、筋腫の体積は60~80%の縮小が得られます。 5年以降の症状改善率は75%、再治療率は20%、症状再発率は11~25%といわれています。一度塞栓した筋腫は大きくなることはありませんが、子宮動脈以外からの栄養血管を有している筋腫や、新たに発生した筋腫があると再増大する場合があります。

UAE前

中央にカリフラワー状に腫大した子宮があります。内部に多数みとめられる黒く丸い腫瘤(矢印)が子宮筋腫です。

UAE後6ヶ月

筋腫はいずれも縮小し、子宮自体の大きさも小さくなっています。

副作用、合併症について

塞栓による下腹部痛が起こります。塞栓中から当日の夜にかけてがピークとなり、治療翌日以降は痛みは改善します。術中術後は、静脈麻酔もしくは硬膜外麻酔で除痛を行います。術後感染症が 1~2%の確率で発症します。多くは抗生物質などで保存的に治療できますが、まれに子宮全摘術などの外科的手術が必要なこともあります。

術後に無月経や卵巣機能不全が生じることがあります。永久的な無月経(閉経)になる確率は45歳以下で2~3%、45歳以上では約8%と報告されています。

UAE後の妊娠・出産について

UAE術後に妊娠したという症例は世界で数多く報告されています。

しかしながらUAE後に流産や異常妊娠の頻度が増えたという報告もあり、挙児希望者に対するUAEの適応は明確な結論が出ていません。将来妊娠を希望される方については、筋腫核出手術の適応も含め、産婦人科医と放射線科医が協力して患者さんと一緒に適応を考慮します。