病院のご案内
新年のご挨拶
明けましておめでとうございます。当センターのような公立病院は、年末年始9連休となりましたので、その間の病棟管理や救急対応にはやや危機感を持っておりましたが、病院スタッフが各々の立場でシフトを守り、大きな問題なく乗り切ることができました。9連休の間に救急外来では408名の患者さんを受け入れ、緊急入院は137件、緊急手術は20件を数えました。インフルエンザやコロナの患者さんも多く、年末年始に日常診療の疲れを十分癒すことができなかったスタッフもいたようですが、労いの意を表したいと思います。また、地域で活躍された救急隊員をはじめ、医療に関わる全ての方に感謝いたします。
さて、当センターの基本理念は「良質・安全な医療の提供」ですが、多岐にわたる高度専門的な医療や年間約7,000件の救急医療を担いながら、3年以上に渡り、濃厚な治療を要する医療事故(過誤)と判断されるものはなく、これは6つの県立総合病院の中で唯一当センターのみです。以前から「診療には緊張感を保ち集中力を高めて臨むよう」に指導していますが、それを実践してくれているスタッフを心強く感じています。
現在ほぼ全ての急性期病院が、経営状況の悪化により危機的な状況にあります。社会情勢を反映し急速な光熱水費・材料費・人件費の高騰、人口減少や在宅医療の充実を反映した入院患者数の減少、公定価格である診療報酬(医療の値段)の実質減などが原因です。全国の公立病院の赤字は、令和5年度は2,000億円を超え、令和6年度はさらに悪化が予想されています。当センターは地域の中核病院であり、不採算な医療も提供する義務があります。それに対し県からいただく補助金もありますが、全く追いついていない状況です。このままいくと必要な医療機器を購入できない、老朽化しても更新できない、必要な施設の改修もできない状況に追い込まれる可能性があり、深く憂慮しています。自治体や住民の皆さんにも危機感を持っていただくことが必要と感じています。
上記したような状況と看護スタッフの減少に鑑み、本年4月から1病棟を休止して病床数を約1割減らすことといたしました。病床は約2割が空床となっていますので、病床が足りなくなることはあまり心配していません。病院の機能を落とさず、より効率的な病院運営を行って、病院経営の健全化を進めてまいります。
県の財政状況も厳しい中ですが、この1年余りの間に放射線治療装置(リニアック)や血管内治療室を更新し、今年は手術支援ロボットの更新も決まっています。継続して医師確保にも努めており、繰り返しになりますが、病院の機能は十分に維持し、さらに機能拡充にも努めてまいります。本年も引き続き当センターに対してご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
2025年1月
兵庫県立淡路医療センター
院長 鈴木 康之
ご挨拶
兵庫県立淡路医療センター
院長 鈴木 康之
兵庫県立淡路医療センターは兵庫県2次医療圏のひとつ、淡路圏域で唯一の急性期総合病院です。29の診療科が最新の診断機器・治療機器を駆使して島内完結の診療を目指しています。当センターは旧兵庫県立淡路病院が2013年に新築移転され、現在の名称に変更されました。県内では最も早い2001年に「地域医療支援病院」の指定を受け、圏域内の10の後方支援病院、100を超える診療所・医院と機能分化し、地域医療支援ネットワークシステム「あわじネット」も導入して常に連携しながら、精力的に診療を進めてきました。2007年には国指定の「地域がん診療連携拠点病院」、2013年には「地域救命救急センター」の指定も受けています。精神科病床、感染症病床など含め441床を有し、厚生労働省の第8次医療計画にある代表的な5疾患(がん、心血管疾患、脳卒中、精神疾患、糖尿病)6事業(救急医療、災害医療、周産期医療、小児医療、へき地医療、新興感染症対応)の全てに対応しています。特に救急医療は年間約7,500人の患者様を受け入れ、原則断ることはありません。がん医療や血管内治療などの高度専門医療が多いですが、安全・良質な医療を展開しています。
淡路圏域は高齢化率38%を超えるため、地域包括ケアシステムの推進支援も重要で、診療後は患者様を居住地域に帰すため、入退院支援センターが地域の医療機関や福祉施設と連絡を取り合い、医療・介護の調整をしています。また、淡路圏域は四方を海で囲まれた半閉鎖地域であるため、災害医療体制を整備しておくことも重要な課題です。ハード面では地下に免震装置、正面玄関には駆動式の防潮堤、屋上にはヘリポートを完備し、ソフト面では17名のDMAT隊員が毎年数回の災害訓練を行っています。当センターDMAT隊員は能登半島地震でも活躍しました。
さて、当センター最近のニュースとして、泌尿器科、消化器外科、婦人科の一部の疾患に対して昨年よりロボット手術が始まりました。少し遅い導入になりましたが、患者様にとっては体の負担が少なく、精密な操作が可能で出血も少ないなどが長所です。今年から一部の肺がんでもロボット手術が始まります。また昨年末に最新機能を有するリニアック(放射線治療装置)が導入され、副作用が軽減され治療効果が高いがん治療の選択肢が増えました。また本年度中に3室完備の血管造影室のうち一つが更新される予定で、不整脈や血管病変に対する心血管内治療がさらに活性化されます。産科では令和3年より助産師が外来から出産まで主体的に係る院内助産が、妊婦様のご希望により可能になりました。常に産科医師がバックアップしており、令和5年度までに23件で安全な分娩が行われました。
今年度から始まった「医師の働き方改革」は、これまで過重労働により医師が心身の不調をきたすことがあり、そのため医療安全面も不安視されていた課題を改善する目的の改革です。しかし、労働時間短縮をカバーする医療のデジタル化など、準備が追いつかない時点でのスタートになりました。高度医療を必要とする患者様へ医療提供レベルを落とさないようにするには、多くの患者様やご家族のご理解とご協力が必要です。例えば、病状の安定した患者様にはかかりつけ医の受診をお勧めします。また、緊急時を除き病状や治療法の説明は平日時間内にさせていただきます。休日や夜間は主治医以外の医師が診療にあたることも増えます。退院日は原則平日の午前中でお願いします。ご不便をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられ、もうすぐ1年が経とうとしています。いまだに小規模のクラスターが発生することもありますが、通常診療は概ね順調にできる状況になりました。研修医指導や学生教育もコロナ前の状況に戻っています。一方で、社会経済情勢が急速に変化し、物価高騰、医療スタッフ不足などで病院運営も厳しさを増しています。環境は変化しても、今後も変わらず地域の中核病院として、圏域内の医療機関と連携して自らの使命を果たしていきたいと思います。各科の診療内容は洲本市ケーブルテレビにご協力いただき、病院ホームページからオンデマンドで紹介していますので、ぜひ一度ご覧ください。
2024年6月7日
兵庫県立淡路医療センター
院長 鈴木 康之