診療科・センター・部門

循環器内科

概要・特徴

当院は淡路医療圏域で唯一の高度心臓救急に対応できる施設であり、重症患者さんを決して断ることなく24時間体制で受け入れています。夜間や診療時間外であっても必ず内科医が常駐し常にオンコールの循環器内科医と密に連絡をとりながら最適な循環器救急を提供しています。
高齢者比率が高い淡路島内では循環器疾患患者さんの多くが高齢者であり多数の合併症を持っておられます。当科では、高齢者の特性を常に念頭に置き、循環器疾患のみにとらわれず、他科とも協力して総合的な診療ができるように努めています。
循環器内科では心臓血管外科と協力しながら全ての循環器疾患に対して対応しています。
また、当科独自の取り組みとして以下のようなことにも取り組んでおります。

(1)新しい心不全診療体制の構築と臨床研究

高齢化の進行とともに日本の心不全患者数がピークを迎えるのが2035年とされています。いわゆる「心不全パンデミック」時代の到来です。心不全パンデミックへの対策は、日本だけでなく世界でも喫緊の課題となっていますが、実は日本の中でも特に高齢化が進んだ淡路島の65歳以上の高齢者比率は、すでに2035年の予想値である33.7%を上回っています。実際、当院の心不全入院患者数はここ10年で倍増し、循環器病棟は高齢心不全患者であふれかえっていますので、淡路島はまさに日本の未来の心不全パンデミックについて研究するのに理想的なモデル地域と言えます。このような背景の下、当科では他の地域に先駆けた高齢心不全患者の診療体制の構築を目指しています。そしてその第一歩として、島内の他の医療機関の御協力もいただき淡路島の心不全入院の現状把握調査を開始しています。さらに疫学的な臨床研究を進めることよって、高齢心不全患者の特徴の抽出、有効な対処方法の検討を行い、最終的には、予後・生活の質(QOL)・健康寿命の改善へと結びつけていけるような診療体制を整えたいと思っています。神戸大学、国立循環器病センターと共同で行っている前向き研究であるKUNIUMI研究の参加登録患者数は、令和6年4月1日現在で2611例となっており、すでに初期の登録患者では5年目のフォローアップが済んでいる患者さんもおられます。学会や論文における情報発信により、KUNIUMI研究は全国的にも徐々に認知されるようになってきました。本研究は、病院の大きなバックアップの下で順調に進行しており、淡路島の心不全入院のほとんどが当院に集中し、また、患者さんの島外への移動も少ないという地理的な特徴から、信頼度の高い貴重なデータになることが期待され、淡路島の心不全患者さんの予後の改善につながるものと思われます。

KUNIUMI関連論文(情報発信)
(2)大動脈弁バルーン形成術(BAV)

大動脈弁狭窄症の患者さんの多くは併存疾患を持った高齢者ですので、手術治療よりも侵襲度の小さいカテーテル治療が選ばれることが増えています。カテーテルを使って人工弁を挿入する経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が主流ですが、大動脈弁拡張のみで人工弁を用いないBAVは、診断機器の進歩によって安全かつ確実に施行できるようになり、効果ではTAVIに劣るものの侵襲度・安全面では優れており、全身麻酔が不要で緊急でも施行可能なため見直されてきています。BAVは比較的コストが少なく再発時も繰り返し行え、治療後数日で退院が可能ですので、高齢者に適した治療法です。当院では2014年からBAVに取り組み、今日では日本有数の施行経験を持つ施設となっています。他施設から循環器専門医がBAVの手技見学に来られることも多く(BAVワークショップの開催)、当院スタッフの岩崎正道医師によるBAV技術解説書も市販されています。学会や論文投稿などにより、BAVに関しての蓄積された臨床データを積極的に発信しています。

(3)足のきず総合医療センター

下肢動脈疾患(LEAD)は、心筋梗塞や脳梗塞の発症頻度が高い全身性の予後不良疾患です。循環器内科では糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の管理や冠動脈疾患の早期発見を行いLEADの血管イベントの予防に努めています。また、以前は重症下肢虚血(CLI)と呼ばれていた包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)では、皮膚潰瘍・皮膚感染から下肢切断を余儀なくされることもあり、切断後の歩行能力の維持には踵を残すことが重要とされています。当科と形成外科を含めた複数の科が「足のきず総合治療センター」としてCLTI治療に取り組んでいますが、我々は末梢血管インターベンション(EVT)治療によって下肢血流を改善させることで切断範囲をできるだけ小さくすることに努めています。また、下肢のEVTだけでなく、透析シャント経皮的血管形成術(PTA)も増加傾向です。(2023年1-12月ではEVT:205例、シャントPTA:164例)

(4)増加するカテーテルアブレーション

高齢化の進んだ淡路島では心房細動などの不整脈が増えています。以前は、不整脈に対する根治治療であるカテーテルアブレーションを行う必要がある場合は全例島外へ紹介となっておりましたが、令和2年7月より当院でもカテーテルアブレーションを行えるようになり、現在では年235例のアブレーションを行っています。新しい治療を積極的に取り入れ、できるだけ淡路医療圏内で医療を完結することが当院の使命であり、これからも安全を第一として最新の医療を取り入れながら発展していきたいと思っています。

病院年報2023(2023.1.1-2023.12.31)

診療実績2021年2022年2023年
待機的カテーテル検査・処置116611791254
緊急カテーテル検査・処置354332373
CAG720625613
LVG344
PCI279247251
EVT136175205
シャントPTA113108164
BAV231821
PTSMA123
ablation179202235
ペースメーカ・新規486370
ペースメーカ・交換143822
CRT-P・新規444
CRT-D・新規894
CRT-D・交換14
ICD・新規428
ICD・交換1
下肢造影検査435662
ロータブレータ152022
OAS294025
OCT283134156
OFDI87188216
IVUS154122112
FFR574251
IABP503648
PCPS171619