診療科・センター・部門

消化器内科

概要・特徴

当院消化器内科をご紹介させていただきます。消化器内科はお腹の臓器を専門にしている診療科です。お腹の臓器は、消化管領域(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)、胆膵領域(胆嚢、胆管、膵臓)肝臓領域(肝臓)、の3つの領域で構成されています。多くの臓器が対象となるため、内科の診療科の中でも守備範囲が特に広いことが特徴です。消化管領域、胆膵領域、肝臓領域のそれぞれに専門性をもった各指導医のもと、”都会の大病院に匹敵するレベルの高い医療を淡路島内で提供する”をスローガンにスタッフ一同日々診療を行っています。消化器内科の患者さんには、近いから仕方なく当科を受診するのではなく、近くで質の高い医療がうけられてよかったと安心していただける診療科を目指しています。また、新たに当院で得られた知見に対して日本だけでなく世界へ発信するべく、学会、論文発表を積極的に行っています。

診療内容

消化管領域(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

口から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸、(咽頭)を観察します。検査が苦手な方には、鎮静薬(眠たくなる薬)を使用したり、鼻から細い内視鏡(細径内視鏡)を挿入したりすることで苦痛を減らして検査を受けていただくことも可能です。また、早期食道がん、咽頭(のど)がんを見つけやすくするNBI(Narrow band imaging)観察を行っています。

NBI(Narrow band imaging)

  • 白色光

  • NBI

※点線で囲まれた部位に早期食道がんがあります。

精密検査の場合は、拡大観察が可能な内視鏡を用います。(※精密検査の場合、経鼻内視鏡は使用しないので口からの検査が必要です。鎮静薬の使用は可能です。)70倍程度まで光学ズームが可能になります。先ほどのNBIと併用することによりがんの診断(がんかどうか、がんの広がり、がんの深さ)に役立てています。

胃がん

  • 白色光

  • NBI

※点線で囲まれた部位に早期胃がんがあります。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)

お尻から内視鏡を挿入し、大腸を観察します。この検査は苦しいものだと考えられているかたは比較的多いと思います。検査がつらくなる原因の多くは、内視鏡により腸が過度に引き伸ばされてしまうことにあります。当科のスタッフは、腸に負担がかかりにくいとされている軸保持短縮法による挿入を習得しており、患者さんにとって短時間で苦痛のすくない検査になるよう常日頃から心がけています。主に用いている内視鏡は、操作性向上に役立つとされる、硬度可変機能(内視鏡の硬さを調整できる)、受動湾曲機能(屈曲した腸に沿わせやすい)を有したオリンパス社製の最新の内視鏡を使用しています。精密検査の場合は、上部消化管内視鏡検査同様に拡大観察が可能な内視鏡を用います。クリスタルバイオレットと呼ばれる染色液でポリープを染めた状態で、拡大観察を行うことにより、ポリープの診断(良悪性の鑑別やがんの深さ)に役立てています。

大腸腺腫(良性)

  • 白色光

  • 拡大(ピオクタニン)

大腸がん(悪性)

  • 白色光

  • 拡大(ピオクタニン)

内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic mucosal Resection)

主に大腸ポリープ(一部がんを含む)に対して行われる内視鏡治療です。まず、ポリープの下の層に針を刺して注射液をいれて、ポリープを浮き上がらせます。次にスネアと呼ばれる金属製のループ状のワイヤーをポリープにかけてしばります。最後にスネアに通電し、ポリープを切除します。

EMR

EMRでは短時間で比較的容易にポリープを切除できます。切除する時に痛みはありません。小さいポリープであれば日帰りで治療することも可能です。大きいポリープの場合やポリープの数が多い場合には2泊3日で入院いただき治療します。

Cold polypectomy

ポリープが小さい場合には、Cold polypectomyを行う場合があります。Cold polypectomyには、Cold forceps polypectomyとCold snare polypectomyと呼ばれる2つの方法があります。Cold forceps polypectomyはカップ形状の鉗子を用いて、ポリープをつまんで切除する方法です。

Cold forceps polypectomy

Cold snare polypectomyはEMRの際に用いられたスネアでポリープをしばって、通電せずにそのまま切除する方法です。

Cold snare polypectomy

Cold polypectomyはいずれの方法も通電を行いませんので、治療後の出血や穿孔(大腸の壁に貫通した穴があくこと)の危険が低く、より安全な新しい治療と考えられており当科でも積極的に導入しています。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic submucosal dissection)

食道がん、胃がん、大腸がんに対する内視鏡治療です。ESDは比較的新しい治療法です。EMRと同様にがんの下の層に注射液を注入した後、電気メスを用いて少しずつ丁寧に切りはがしていく方法です。
この方法を用いることで、大きい病変など従来の方法で切除できなかった病変を一括して切除することが可能になりました。

巨大な病変① 直腸

巨大な病変② 胃

がんを一括して切除した場合と分割して切除した場合では、一括で切除したほうが、がんの再発率が低いことが分かっています。ESDの登場により、これまで内視鏡治療ができず外科手術で治療されていたがんが、内視鏡で治療可能になりました。一方で、ESDでは合併症(出血や穿孔)が従来法よりも発生しやすく、高度な内視鏡技術、豊富な経験が必要になります。当科では多数のESD件数を有している施設(虎の門病院、総合南東北病院、北野病院)でこれまで内視鏡診療を行ってきた河野部長を中心に安全確実なESDに取り組んでおり、良好な治療成績を有しています。

消化管ステント挿入術

癌によって消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)が閉塞すると吐き気が出現し、食事が摂れなくなります。従来は胃、十二指腸の狭窄に対してはバイパス術、大腸の狭窄に対しては人工肛門造設術や結腸切除術などの外科治療が行われていました。最近は金属製の筒(消化管ステント)を狭窄部に留置して消化管の閉塞を解除する処置が行われます。内視鏡を用いて留置できるため、身体への負担が少ない治療です。当院では食道、胃、十二指腸、大腸を合わせて年間25-30例程度ステント留置術を行っています。

癌による狭窄に対して消化管ステントを留置しています。 腹部レントゲンでステントが広がっていることが確認できます。

胃癌

大腸癌

胆膵領域(胆嚢、胆管、膵臓)

超音波内視鏡検査(EUS)/超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)

通常の内視鏡検査では、臓器の粘膜表面しか見えません。超音波内視鏡検査は、超音波を使って胃や食道の粘膜表面よりも深いところに存在している腫瘍や、胃や十二指腸から膵臓や胆管、胆嚢などを詳しく調べる方法です。検査時間が30-60分程度必要なため、鎮静薬(眠たくなる薬)を使って検査を行います。
EUS-FNAとは、膵臓や胃の粘膜よりも深部の腫瘍などに対して、超音波内視鏡で確認しながら、針を刺して細胞、組織を採取する検査方法です。通常の超音波内視鏡検査は日帰りでの検査が可能ですが、EUS-FNAの場合には数日間の検査入院が必要です。

EUS-FNA

※点線で囲まれた部位に膵がんがあります。

※点線で囲まれた部位が膵がん組織です。

内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP:Endoscopic retrograde cholangio pancreatography)

ERCPは胆嚢、胆管、膵臓の病気を診断するために、内視鏡を用いて行う検査です。肝臓で作られた消化液である胆汁と、膵臓で作られる消化液の膵液の出口である十二指腸のファーター乳頭部に細い管をいれ、レントゲンで撮影し検査します。最近では検査単独で行うことは少なく治療を前提としたものが多くなっています。
特に閉塞性黄疸(癌や結石等により胆汁の流れ道が詰まって胆汁の流れが悪くなった状態)や胆管炎(胆管に感染をきたした状態)の治療が主体になります。結石を取ったり、ステントを挿入したりするために十二指腸乳頭を切開するEST(内視鏡的乳頭括約筋切開術)を併用することがあります。

当科のECRPの件数は年間で350-400件程度です。

偶発症としては、急性膵炎(膵臓が炎症を起こすこと)が特に問題になっています。発生頻度は1.6-5.4 %の頻度で生じるとされています。当科のERCP(2014-2016年度)における急性膵炎の発症頻度は4.2%でした。当科では併発症を可能な限り予防できるよう、最新の知見を取り入れ、工夫、努力を行っています。

超音波内視鏡を用いた治療(超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術)

重症の膵炎では治癒した後に膵臓に嚢胞が形成される場合があります。また、嚢胞内に細菌が感染し発熱や腹痛などの症状が出現することがあります。以前は内科的処置を行うことは困難でしたが、最近では、内視鏡を使用し治療を行うことが可能となりました。
嚢胞感染に対して、超音波内視鏡(先端に超音波のついた特殊な内視鏡)を用い、嚢胞を穿刺しステント(プラスチックや金属製の筒)を留置することによって、手術を行わずに治療ができます。方法は以下の通りです。

  • 1. 内視鏡を胃に挿入し、超音波で嚢胞を確認します。
  • 2. 血管がないことを確認してから嚢胞を針で穿刺します。
  • 3. 嚢胞内にガイドワイヤーを留置してから穿刺部を拡張します。
  • 4. レントゲンで確認しながらガイドワイヤーに沿わせてステント(プラスチックや金属製の筒)を留置します。通常は、鼻から出すステント(内外瘻チューブ)と胃の中で巻くステント(内瘻チューブ)を併用して留置します。

超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術

※先端に超音波のついた内視鏡で嚢胞を確認して針で穿刺し、プラスチック製のステントを挿入しています。

時にチューブ留置のみでは感染が改善しないこともあるため、その場合は嚢胞内にカメラを挿入し壊死物質を取り除く(ネクロセクトミー)治療を追加することもあります。

肝臓領域(肝臓)

※肝炎治療
肝炎の原因となるウイルスとして代表的なものはB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)です。

B型肝炎

HBVの感染は血液や体液を介して起こります。HBVの感染は一過性の感染で終わるものと持続感染(キャリア)となるものがあります。成人の初感染の多くは一過性の感染で終り、キャリア化することはまれです。HBVキャリアの主な感染経路は母児間感染と幼少時の水平感染(予防注射の針の使い回し)と言われています。日本におけるHBVキャリアは130~150万人と推定されています。

一過性感染

一過性感染では急性肝炎を発症する顕性感染と、症状のないまま治癒する不顕性感染に別れます。いずれにしても、症状が治まった後HBVは排除されており、免疫を獲得します。免疫獲得後は再びHBVに感染することはありません。
*急性肝炎の1~2%程度は劇症肝炎となる可能性があります。劇症肝炎とは肝炎が急激に悪化し、肝不全と意識障害を起こす病態です。劇症肝炎の致死率は70%ほどあるとも言われています。

持続感染

感染したHBVが排除されずに肝臓にすみついた状態です。
6ヶ月以上肝炎が続く状態を慢性肝炎と言います。
慢性肝炎の多くが出産時や幼児期に感染した無症候性キャリアからの発症と言われています。

(図:HBV感染後の経過)

治療

一過性感染の場合は肝炎改善後にウイルスは体から排除されますが、慢性肝炎の場合は、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能で、治療の目的は肝硬変への進展や発がんをおさえることで、生命予後を改善し、日々の生活の質を上げることとなります。
治療法は、大きく分けて、抗ウイルス療法(インターフェロン(IFN)や核酸アナログ製剤)や肝庇護療法、免疫療法(ステロイドリバウンド療法など)があります。当科でのB型肝炎に対する核酸アナログ製剤(飲み薬)治療件数を下記に示します。

C型肝炎

C型肝炎ウイルスに初めて感染した場合、30%は自然に治りますが、70%は持続感染(慢性肝炎)となります。未治療の場合、その後20年、30年といった長い年月をかけて肝硬変そして肝臓がんへと進行します。日本の肝臓がんの原因の65%はC型肝炎ウイルスによるものと言われています。

治療

以前はインターフェロンがC型肝炎治療の中心でした。しかしながら、インターフェロン治療は注射が必要で、副作用が多く、治療期間が長い、非常に負担の大きい治療でした。
インターフェロンフリー治療(飲み薬)の登場で、さらなる高い治療効果と治療期間も12週間まで短縮されました。当科でも積極的にインタフェロンフリー治療を行っており、2014年12月から2019年12月までに152名の方にインターフェロン治療を行いました。当科でのインターフェロンフリー治療の成績を下記に示します。

*SVR12=治療終了後12週目時点でHCV-RNA未検出の状態
SVR12が達成された場合には、ほぼ完治していると判断します。

C型肝炎の治療には医療費の助成が認められており、1月当たり1万円~2万円の自己負担での治療が可能です。治療に関してはお気軽に主治医にご相談下さい。

※肝癌治療
肝がんの治療は外科治療、経皮的局所療法(RFAなど)、肝動脈塞栓(TACE)療法が中心になります。がんの個数、大きさ、血管浸潤、転移の有無により進行の程度を評価します。進行の程度や肝機能、全身状態に応じて治療を選択します。我々、消化器内科では主に経皮的局所療法、肝動脈塞栓療法(手技は放射線科医が担当)を行っています。

経皮的局所療法

経皮的局所療法は開腹せずに、局所麻酔を行ったうえで、皮膚の上から直接がんに針を刺して行う治療法です。経皮的局所療法にはラジオ波焼灼療法(RFA)、エタノール注入療法(PEIT)があります。RFAはラジオ波で腫瘍を焼灼壊死させる治療です。エタノール注入療法はがんに直接エタノールを注入することでがんを壊死させる治療です。現在は治療効果の高いラジオ波焼灼療法が経皮的局所療法の主流となっており、当科でも肝がんの局所治療の第一選択をラジオ波焼灼療法としています。ラジオ波焼灼療法の治療時間は、がんの大きさや個数により異なりますが、およそ1-2時間程度で終了します。治療後CTなどで治療の効果判定を行い、がんが焼灼されていることを確認します。追加治療が必要なければ1週間ほどで退院が可能です。

RFA

RFAの治療効果

  • 治療前

  • 治療後

※治療前の肝がんは白く染まっていますが、RFA治療後には無くなっており焼灼壊死されたことが分かります。

肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)

肝がんは進行すると肝動脈からの血流が豊富になります。TACEはがんを栄養する肝動脈まで選択的にカテーテルを進め、抗癌剤と塞栓物質を入れて動脈の血流を遮断しがん細胞を壊死させる方法です。

化学療法(抗がん剤治療)

当科では、主に食道がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がんに対して化学療法(抗がん剤治療)を行っています。また、それぞれのがん診療ガイドラインに準じて科学的根拠に基づいた治療薬の選択を行っています。化学療法導入の際には、副作用の傾向を把握するために入院で行うケースが多いですが、治療の継続は主に外来通院で治療を行います。外来通院中の化学療法は、専門スタッフが常駐している化学療法室で行いますので、安心して治療を受けていただくことができます。外来通院治療により、患者様の負担をなるべく小さくしたいと考えております。

※当科では、クローン病、潰瘍性大腸炎を対象とした生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブなど)の点滴治療も行っております。

当院の外来化学療法室は、ベッドが4床、リクライニングシートが9つあり、1日平均15名程度の患者様が治療に来られています。

診療実績

上部消化管内視鏡検査

下部消化管内視鏡検査

胃ESD

食道ESD

大腸ESD

大腸EMR

超音波内視鏡

ERCP

EUS-FNA

消化管ステント