地域連携の取り組み
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淡路医療センターの地域医療のかたち
副院長(医療連携・医療情報担当) 久島健之
1)変わりつつある急性期病院の果たす役割
淡路医療センターは淡路圏域の唯一の急性期総合病院であり、今後も高い質に診療機能を維持し続けることは変わりません。
それに加えて、淡路圏域の約100の医療機関、および看護・介護関連施設との連携を円滑に進めるハブであるべきだと自負しています。年間十万人の紹介患者を受け入れつつ、それら患者の積極的な逆紹介/転院/在宅復帰を促進していています。
以前には、急性期医療機関は急性期診療の部分のみを担い、回復期あるいは在宅の部分とは明確に機能分化されていて、社会が求める急性期病院の在り方も現在とは異なる時期もありました。しかし、高齢化を迎える社会では、地域包括ケアシステムを各地域で十全に機能させるために果たす役割も急性期病院に求められる重要な使命の1つとなっています。
高齢化の著しい淡路圏域において求められる地域医療のあるべき姿はこの10年で明らかに変わってきています。 医療の進歩によりそれまでは治療が困難だった病気も治癒する確率が高くなり さらに完全な治癒できなくても病気とともに生活をおくることのできる患者さんが増えています。急性期医療を終えた後に自宅あるいは地域の在宅系施設に戻る患者さんが増えてきています。 自宅に帰った後もなるべく生活の質を落とさず、普通に近い生活を送ることが重要な命題となっており、急性期医療の現場でもそのために入院中から積極的な介入が必要です。 それは 医師と看護師のみならずソーシャルワーカーや地域のかかりつけ主治医や訪問看護師やケアマネジャーなどの力が必要です。 退院後の患者さんの生活環境を医療介護福祉の観点から多面的に評価し、質の高い生活を送れるよう多くの職腫の支援と共同作業が必要です。我々の施設では患者さんが入院されますと 早いタイミングで退院後の生活を見据えた他職種によるカンファレンスを行い、退院後の診療あるいは生活に円滑に意向できるべく介入しています。特に、当院の地域連携室のスタッフは、その中で各種の調整や連絡において大きな役割を担い、退院後に向けた準備に早期に着手できています。
このように退院後の患者の生活を見据えたサポートを多職種で協働する、このことも急性期病院の重要な使命になっています。 地域全体の医療および介護の状況を俯瞰的に見据え、各施設が各々の機能を十全に発揮していただくためにも、当院が果たす役割は常に変わっていきますし、その時の要請に応えていかなくてはなりません。
地域包括ケアシステムとは
2)ICTで患者さんの情報を共有して利活用する
身近な生活のなかで、いつでも診てもらえる、相談できる、指導してもらえる、そんな信頼できる主治医、すなわち、かかりつけ主治医をもつことは、とても大切です。もしも、居ないのなら、今からでも見つけてください。
かかりつけ医から紹介を頂き、当院で診療を行います。ある程度、診療が進むと、その後は再び自宅あるいは施設にて生活を再開し、日常的にはかかりつけ医の先生に診てもらう。これが、多くの患者さんの一般的な時間導線なのですが、かかりつけ医に当院での治療の内容・検査結果・経過や状態を理解してもらうことは、普段の診療や治療後の生活を支えるために 非常に重要なことです。患者さんを取り巻く情報を共有するシステム、正確な情報を随時共有できれば、地域包括ケアの中の在宅期においても、地域の医療者が適切に介入できるようになります。
淡路圏域ではICT を活用した 診療情報の共有を目的とした 診療情報ネットワークも構築しています。 これをあわじネットと呼んでおります。あわじネットに参可していただいている医療機関からは淡路医療センターの電子カルテの一部の診療情報を院外からオンラインで参照できるようになっています。 当院で処方したお薬 ・注射の情報 ・退院サマリー・検体検査の結果などが 、参照されます。このあわじネットには約9000人の患者さんと50弱の医療機関が登録されて、日々の診療に役立てていただいています。今後は、地域の診療所や島内の病院の診療情報も相互に閲覧できるようになれば、更に有用性が高まります。また、淡路圏域にとどまらず徳島県域や神戸圏域とも医療情報ネットワークの完成を目指しています。
3)リハビリ・フレイル・生活のマネジメント
先に退院後の患者の生活も支えると記しましたが、それにはリハビリが極めて重要な役割を果たします。従来のリハビリに加えて、口腔ケアや誤嚥性肺炎の予防、栄養管理の重要性の深く認識されようになりました。
急性期リハビリテーションでは生活に戻る準備、回復期リハビリテーションでは生活の再開あるいは再建にむけてと役割があります。島内の他病院も優れたリハビリ機能を有しており、各病院がそれぞれに特色を生かして実践的リハビリ診療を提供されています。病院間のリハビリスタッフの交流や診療応援も実現しており、この面でも積極的な連携を進めてきました。
介護に入るのは人生の最終ページまで我慢して、1日でも元気に健康で楽しく過ごしたいものです。単なる長生きではなく、元気に長生きする。これこそが、今、目指すべき命題です。その最重要ポイントとして、フレイル予防と生活のマネジメントがあります。この領域には急性期医療機関が直接的な関与する機会は少ないのですが、地域包括ケアを構成する重要な一員として、急性期医療機関としても可能な支援は提供していきます。それためにも、自治体や在宅系医療機関・福祉施設とも連携し協働していく意向です。
4)新しい地域医療連携のかたち
今、淡路医療センターと島内の複数の病院・医療教育機関は、新しい連携のかたちの構築を目指して協議を始めています。それは、既に日本で20を超える地域で導入されて、動き始めている地域医療連携推進法人という形態です。
この淡路圏域で、地域医療連携推進法人が形成されると
- ・従来よりも人事交流が容易に行えます
専門医や専門看護師が他の病院に診療応援に行く
複数の病院のスタッフが同じ研修や講習を受ける - ・圏域で医療や介護に係る新しい取り組みやプロジェクトを共同で考える
- ・診療に必要な医療材料や薬品を共同で安価に購入する
- ・ICTを用いた患者さんの紹介逆紹介診療に係る情報共有を更に進める
- ・淡路に大災害が来た時に備えて、圏域での総合的な災害時医療の準備を協議する
- ・圏域で共同して医療人材の教育と育成に携わる
などのメリットが考えらます。
これにより、淡路圏域全体で
①医療の質の向上や効率化
②安定した医療人の人材確保(就業と定着)
③圏域全体で災害対応の体制構築
などが期待され、それを実現すべく進めていきます。